■ フェアトレード:争点と提言

1. フェアトレードの現在の展望と争点

1.1. 定義と基本的なまとめ

発展途上国の生産者がより有利な条件で貿易に参加できるようにするために従来の国際貿易のあり方に新しい社会経済の実践を行うことを総称してフェアトレードと呼んでいる。この実践は、生産者と消費者のパートナーシップと次に掲げるいくつかの最低基準に基づいている。

  • 生産者への最低価格またはきちんとした価格を支払うこと。
  • その国の最低労働条件、または国際労働事務局の基準を遵守すること。
  • 取引期間を明記して、できる限り直接的商取引を行うこと。
  • 情報開示・必要であれば生産に対する前払いに応じること。
  • 消費者教育と啓蒙

現在までフェアトレードは、発展途上国への支援を強調しながら先進国と発展途上国が連帯する社会運動として主に捉えられてきた。フェアトレードは、ここ3040年来、南アメリカ、アフリカ、アジアの組織とヨーロッパの組織とのパートナーシップを基に目覚しい進展を成し遂げた。

フェアトレードのパートナーとは、

  • 協同組合のように民主的に組織された生産者、及びフェアトレードによりその労働条件を管理された労働者。生産者は、一般的に発展途上国に、他のパートナーは、どちらかといえば先進国に在する。
  • 個人経営の今までとは異なる商店、この商店は、NEWS!という国内と国際ネットワークに参入することができる。
  • フェアトレード生産物を商品化する(輸入や流通)企業
  • フェアトレードの認定ラベルを発行する組織
  • 消費者

まとめ

フェアトレードを数字でまとめるのは難しい。世界貿易に対する割合は、推定0.01%であり、数字的には小さいが、既に意味のある存在となっている。生産者の生活条件や生産地に与えるインパクトを理解することのほうがより重要である。もちろん、大変多くの生産者グループや地域に好影響を及ぼした事例が、多数、報告されている。いくつかの協同組合の名前が、広く知れわたるようになったのもフェアトレードのおかげである。

フェアトレード実践期間が短いにもかかわらず、これらの組織が、このインパクトをより組織的な方法で計測しようと試みているのには驚きを禁じえない。いくつかの生産者組織では、生産地域におけるの社会的条件変化を検証する際に、社会発展や継続的発展の指標として利用しているが、多くの生産者組織では、生産者との商業的関係における金銭的インパクトしか明らかになっていない。このインパクトの検証は、コーヒーや手工業の分野では確かに進んでいる。フェアトレードのグループ内での情報や一般大衆に対する情報は、まだ数値化できないのが現状である。異なった戦略に基づいて活動している者たちの間でフェアトレードの限界と争点について考察しあうのは、まだ難しいように思われる。

1.2. 質問

発展途上国との人道主義的立場から始まった(自冶、パートナーシップ、情報開示、公正)フェアトレード推進にあたって、その運営の仕方や究極目的に関していくつかの質問が寄せられている。「フェアトレード」研修会の討論でも、さらなるフェアトレード運動推進のために、6つの課題が明らかにされた。

  • フェアトレードのコンセプトの陳腐化と私的利益追求に取り込まれる可能性。この問題は、フェアトレード運動が、ある程度の成功を収めた代償ではあるが、現在、我々の国では、道徳や倫理規律が大流行である。環境問題と一緒になって、フェアトレードの議論は、世間に受け入れられやすい。明確な定義やフェアトレード組織の認証方法が欠落している状況で、フェアトレードは、大手流通業者や会計監査組織などに併合されてしまう可能性を孕んでいる。
  • フェアトレードのインパクトの測定。フェアトレードは、それ自体が目的ではない。求められている目的にあわせて指標を選択しなければならないであろう。
  • フェアトレードの地理的拡大に関する問題。先進国と発展途上国との間だけの運動であるのだろうか?先進国から発展途上国へ、先進国同士の、発展途上国間でのフェアトレードも存在するであろうか?発展途上国に雪崩のように流れ込んでくる我々の補助金を受けた製品や工業製品を押し留めるためには、何をなすべきか?経済におけるフェアトレードの位置づけとその他の行為との関係から生じるフェアトレードの位置づけに関する問題。
  • 新しい製品にもフェアトレードを拡大していく事が必要であると思われる。これには戦略が必要とされる。商業的拡大だけが目的なのか? 商業的目的と消費者教育の目的をいかにうまく組み合わせるか?
  • ラベル認定は、フェアトレードの戦略の一つとして発展してきた。ラベル認定の方法については、現在、議論中である。製品について認定するべきか、組織について認定するべきか? それとも両方とも認定するべきか? ラベルは、詳細な条件を表すものであるべきか、または、先進的運動のさきがけを示すものであれば良いのか?
  • フェアトレードの戦略についての討論を活発化させる。現在、戦略は、多様化しており、異なった見解により戦略もさまざまである。当事者によって戦略は、しばしば、多岐にわたる(例えば、大手流通網の使用手段について)。現在のところ、当事者の間で緊張関係ないし意思の疎通がうまくいっていないケースが散見できる。実際には、お互いに補い合う見地にたってフェアトレード実践の多様性を認めなければならないであろう。

1.3. フェアトレードの究極目的:経済への組み込み、または経済の変遷?

フェアトレード実践の究極目的を考察することなしにフェアトレードについて討論したり、問題点を述べるのは困難である。こうしたことから我々の研修会では、フェアトレード共通のビジョンを明確にするつもりである。何年か前のフェアトレードの定義では不十分であると我々は、認識している。従前なされていた定義とは以下のような点を強調していた。

  • 社会的に阻害されている小規模農民が世界市場にアクセスできるようにする。
  • 世界貿易構造が、小規模農民を締め出している状況から、従前の定義は、商業的観点に集中していたきらいがあった。この定義では、社会的疎外の原因が、労働の国際的分業にあるということに十分考慮していない。本来のフェアトレードの目的は、世界貿易に疎外されている労働者を取り込むことであるが、他の目的のための単なる方法論に過ぎなくなっているのではないか?フェアトレードを他のローカルな、または、商業的ではないこれまでにある他の運動よりも優遇するべきであろうか?

フェアトレード運動は、これまでに随分と進展してきた。そして現代の定義は以下のようである。

  • フェアトレードの究極的目的は、持続的発展である。

従前の定義よりも、より経済学的視点に基づいた進展という点が重要である。持続的発展という概念には、経済的、社会的、環境的という側面を内包している。フェアトレードは、社会的、経済的、環境的問題のバランスをとる新しい探求の手段であると定義できるのではなかろうか?

このような見地から「環境重視の立場に立ち人間を中心に見据えた経済学」(ヤマナ)または、経済的疎外感を訴え続ける「社会的に疎外された生産者グループの持続的発展を可能にする国際レベルでの商業関係を構築することを目指す、これまでとは違うアプローチ」(ヨーロッパ・フェアトレード連盟、EFTAの定義)という風に定義することができる。

「フェアトレード」研修会では、社会と経済を加味した、より広い観点から定義し直してきた。一般的に、貿易とは、商品の交換を扱う経済活動の一部に過ぎないと考えられている。こうした文脈においては、フェアトレードは、パートナーシップの価値観やら商行為を社会的に再考するといった観点から継続的発展や生活圏の公正さに貢献するといった目的をもって商品の交換を扱う経済的活動の一部と考えることができるかもしれない。

2. 提言

次の提言は、フェアトレード運動に関係するさまざまな人々のグループにより行われた責任ある、多国間の連帯を目指した世界を築くための会合の中で話し合われた末の産物である。これらの提言は、フェアトレード運動をより発展させるために、また、社会の発展や地域レベルの結束のインパクトを強めるために、さらには、フェアトレード推進や現在の世界経済体系から生じる疑問に答えるために詳細な要点を明らかにしている。

2.1. 研修会は、連帯する経済運動の一環、すなわち貿易のもう1つの形というように定義されていたフェアトレードのビジョンの拡大を提唱する。このビジョンでは、継続的で公正なる発展や、また、消費者との関係や消費者の責任をもってビジネスのルールや慣行を進展させていこうと提言している。フェアトレードの実践やモデルや体系の多様性が存在することを認める必要性があると思われる。製品によって、生産者組織や流通経路や文化によってさまざまな多様性がフェアトレードには、存在することが考えられる。

2.2. フェアトレード運動のための戦略的目的のひとつは、フェアトレードのすべてのパートナーが積極的に参与し、パートナー間の意思の疎通を図ることである。生産者とそこで働く労働者は、フェアトレード全体の中で重要な部分を占めるパートナーとして特に認知されなければならない。また、新しい財やサービスの拡大のためには、生産者とそこで働く労働者は、特にフェアトレードの戦略と基準を考慮においての生産を前提としなければならない。生産者とそこで働く労働者は、また、フェアトレードの基準を実行し遵守する入念な準備を前提としなければならない。組織、生産者組合の強化、そしてすべての当事者の情報や意思疎通を円滑にすることがフェアトレードに参加するための重要な点である。

2.3. 地域の継続的発展はフェアトレードの主な究極的目的である。しかし、この究極目的は、いくつもの実践の積み重ねを前提としている。こうした方向付けにおいてフェアトレードは、他の経済要素との連携を模索しなければならない。例えば、金融の連携であり、地域マネーである。(このセミナーでのもうひとつの議題となった)フェアトレードは、また有機農業との連携を目指さなければならない。有機栽培は、現在、消費者の最大の関心事となっており、環境に及ぼす国際貿易の生産様式の影響を十分に配慮している。発展途上国における継続的発展の優先事項の一つは、食糧自給の確保である。フェアトレードは、食糧自給を後押しする。地方の発展に対するフェアトレードのインパクトを計測するためには、フェアトレードは、他の適切なる発展の指標となる経済連帯手段とともに発展しなければならない。

2.4. 消費者の啓蒙が、もう1つのフェアトレードの戦略的目的である。フェアトレードは、消費者教育の重要な手段となることができる。その目的は、経済的交換のすべてに公正さを持ち込むために明確な規範と基準を統合して推進していくことにある。信頼できるフェアトレード構築のためには、一連の経済連鎖にあるすべての当事者によりフェアトレードの基準を遵守してもらう必要性がある。当然、当事者の中には流通業者も含まれ、フェアトレード商品の産地や、社会的、環境的情報も網羅して記されなければならない。フェアトレードは、1つの過程と捉えるべきであり、最終的な形ではない。フェアトレードは、フェアトレードを行うことを困難としている現行の体制を批判する役割だけでなく、現状を変革していく進歩的な役割を担っている。

2.5. 最後に、社会経済の争点の位置にまでフェアトレードの進展を高めるための条件を述べたい。そのためには、さらに加工される製品やサービスなどを含めて新しい製品、新しい分野においての公正なる基準を確立することが重要である。そして、フェアトレードの社会的認知のために戦わなければならない。例えば、フェアトレード商品のための法的地位確立などである。フェアトレードは、製品の生産拠点に近いところでの製品加工や生産地域市場での製品の販売促進を政治的に推し進めることも提案しなければならないであろう。最後に、フェアトレード運動は、持続的発展の手段として2国間ないし多国間で協調した政治活動においてフェアトレードを内包していくことを目指さなければならないであろう。1999年以来、ヨーロッパ共同体は、これらの課題を既に合意しており、アフリカ・カリブ太平洋諸国とヨーロッパ諸国のパートナーシップを結ぶCotonou協定においても同様である。先進国と発展途上国の間だけでなく、すべての国との間でこうした関係を広げていかなければならない。

3. 革新的成功体験の例−フェアトレード研修会

フェアトレード研修会は、成功体験などの共有の場でもある。ここに革新的成功体験のいくつかを紹介する

カナダのケベックで実践されている農業

これは、都会と田舎での地域の連帯に基づいたフェアトレードのもう1つの形であり、消費者と地方の有機栽培農場のパートナーシップによる直接的関係を構築した。ケベックでは、収穫に先立ってその一部を買い付けることと交換に消費者は、野菜や他の生産物を定期的に彼らの自宅へ配送してもらう。パートナーは、時として農業組織に招待されたり、また農場へ手伝いに出かけたりする。ケベック・ネットワークは、2000年夏をもって満5年を迎えた。現在では、50以上の農場が参加し、5400人の人々に有機栽培の認定書をつけた製品を供給している。共同体に支援されている農業は、先進国でも発展途上国でも存在する。

 

南北アメリカの田舎での組織による同盟

田舎連合とは、アメリカとメキシコの文化的にも地理的にも多岐にわたる農業労働従事者や小規模農民の90以上の組合が寄り集まっている同盟であり、地方においての公正で持続ある共同体発展を促進するために結成した。1978年にアメリカにおいて22の組合が結集し、現在では75のアフロ・アメリカンの組織、貧困白人組織、先住民組織とメキシコの13の小規模生産者組織を擁している。自由貿易ゾーンのプロジェクトに対抗して、メキシコやアメリカの地方共同組合が、1992年に「もう1つの自由貿易協定」が発足され(NAFTA同盟発布の2年前)、フルーツ、野菜、コーヒー、麦、手工芸品や共同体に資する他の生産物を商品化し、村同士で、自由貿易のもう1つのあり方を実践する目的で結成された。地方での連帯は、地方の動きを強化し、アメリカやメキシコや他の国々での共同体発展のための行動に勢いを与えた。地方での連帯は、具体的商業プロジェクトを通して地方の動きを強化する。アメリカでのビル農場での討論の場合(20017月)、2つの国の組織は、公的政策を提言し、これらの提言は、ワシントンのキャピトルで20014月に行われたアメリカ議会において代議士たちに伝えられた。

 

有機栽培とフェアトレードの相乗効果

この2つの運動は、認定書のあり方などをめぐって、お互いに影響を及ぼしながらも、これまでのところ独立した形で発展してきた。こうした製品は、しばし高くつく。フェアトレード認定委員であるFLOと有機農業運動(IFOAM)は、有機とフェアトレードを組み合わせた認定書を作成し、発展させるために委員会を発足した。特にフランスでは、有機栽培の製品を扱っている流通業者は、フェアトレード商品も同じネットワークで扱うようになった。

いくつかの国で国や地方が発行する認定書が、使われるようになった。例えばメキシコでは、フェアトレード・ラベルが国レベルで発行されており、メキシコで生産されている製品についてはメキシコ市場で正当に扱われることを可能とした。国際フェアトレードのやり方(製品や生産者の認定)を模倣してメキシコ国内市場に生産者のための基準を設定した。すなわち、持続的共同体発展のための特別援助金を含む保証価格であり、その製品が社会的規範だけでなく、環境保全や消費者の健康も含めた基準を満たしているかが問われている。

 

生産過程の認定書

長い生産過程を通してその生産過程に認定書を発行する方法が実行されている。スイスのSTEP財団やフランスのヤマナ組織が、手縫いで作られる東洋の絨毯の製造過程を検証して認証を与える「生産過程の認定書」と呼ばれるものがそれである。生産過程の認定者により、垂直な生産過程を統合してフェアトレード推進の意思を明確にし、すべての当事者を統合するというフェアトレードの目的を達成しやすくする。この認定書の革新性は、フェアトレード推進に積極的に関わっている商人に認定を与えることで、生産者同様に、商人が、経済や地方の状況、そして特に住民の要求を考慮に入れたフェアトレード推進役を担うことができる。市民社会、企業、公的権力の3者がラベル発行の権限を有する。                                   役割や責任の明確化、そして地方の当事者の取り組みが、さまざまな文化や地方でのフェアトレードの規範を受け入れることを可能とする。市民社会の存在は、フェアトレード基準がうまく作用しているかどうか確認することを可能とする。直感的な判断でなく地方の人々の実際の知見こそが重要である。

責任感のある観光

観光サービス業は政治的経済的に重要な論点となっている。発展途上国では、産油に次ぐ2番目の産業となっていることが挙げられる。問題は、かなり複雑であり、製品が旅行するのではなく、消費者が旅行するからである。だからこそ旅行する個人の自覚こそが求められている。1997年により公正で意識ある旅行に関心のある個人やグループにより「イタリアの責任ある旅行組織」が発足された。この組織の目的は、観光から上がる収入と観光が環境に与えるインパクトを勘案して観光地の地方共同体を尊重して旅行のあり方を提言していくことである。イタリアの責任ある旅行組織(AITR)では、旅行前、旅行中、旅行後の3つの時点で分析を行い「持続性のある旅行のあり方」を提言している。

ヨーロッパの清潔な洋服キャンペーン

先進国と発展途上国の間での貿易に関する教育プログラムはフェアトレードの目的に貢献している。清潔な洋服キャンペーンは、1990年にさまざまな組織が集まってヨーロッパ各国で盛んに実行されており、これまでのところこのキャンペーンは、成功を収めている。発展途上国の輸出繊維産業で働く労働者の労働条件について輸入業者や消費者に責任感を芽生えさせることが、このキャンペーンの主眼としているところである。新学期や休暇、クリスマスのショッピングなどとさまざまな季節に応じて個人の消費者だけでなく、集団生活や集団消費行動のあり方に働きかけている。


フェアトレード研修会

Chantier commerce equitable : faitrade@socioeco.org
Site Web du chantier : http://fairtrade.socioeco.org   

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