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■ フェアトレードの現状と可能性 フェアトレードとは 1960年代にヨーロッパから始まった貿易の形態であり、経済的、社会的に立場の弱い生産者に対して通常の貿易よりも高めに設定した価格で継続的に商品を取引し、発展途上国の自立を促すという人道主義的側面が強い社会運動であったが、現在では、その定義に変化が見られる。 現在のフェアトレードとは 現在のフェアトレードのキーワードは、持続的発展であり、従前の定義よりも、より経済学的視点に基づいている。持続的発展という概念には、経済的、社会的、環境的要素を含んでいる。ヨーロッパにおいてフェアトレードは、経済的、社会的、環境的問題のバランスをとる新しい社会的装置であると認識されており、各国ヨーロッパ政府は、各国のフェアトレード推進団体やボランティア組織と協力してフェアトレードの啓蒙活動を盛んに行っている。 継続的発展とは 継続的発展とは、WTO(世界貿易機関)閣僚会議や世界銀行並びにIMF(国際通貨基金)の発展プログラムの精神にも見られるように、世界中で13億人の人々が貧困に苦しんでいる現状から、まずは、貧困解消、そして地域社会や環境にも配慮し、持続的な経済発展を推し進めようとするグローバルな政策目標である。 世界規模で持続的発展政策を実現するためには、各国政府、国際機関、多国籍企業の積極的取り組みが求められていることは言うまでもない。 従来の政策との違い 日本において従来の政府政策は、ケインズ主義的な政府主導の市場介入が主な政策であり、戦後一貫してこの政策は、継続してきた。現在、小泉内閣の構造改革路線により、この方針は軌道修正を迫られている。しかし、その対抗手段であるすべてを市場原理に委ねる新自由主義的手法の限界も明らかになってきており、リストラ、株式資本主義、徹底した成果主義等により日本社会における市民の連帯感は、薄れている。日本社会も他の先進国同様、耐え難い不平等感に見舞われ、社会の不安定感は日増しに増加している。 新たな利権を生み出すと同時に市場機能を損なう政府主導による市場介入でもなく、また、所得の再分配機能が、全く欠落し、社会や環境に対する配慮がない野放図な市場原理主義でもない新しい政策としてヨーロッパで現在、最も注目されているのが、フェアトレードである。 市民意識 そこで新自由主義的グローバリゼーションに対抗するために従来のケインズ政策、すなわち、政府が市場へ直接介入するのではなく、政治的社会的に市民が、直接かつ積極的に活動することを可能にするのが、フェアトレードである。我々は、日常生活を通しての経済的選択行為、つまりフェアトレード商品の購買を通して持続的発展を支援することができるのである。この意思表示を土台として今から40年以上前にフェアトレード運動が、始まったことは前述したとおりである。 フェアトレードとは、国際貿易において弱者を力でねじ伏せる不公平を正そうとする意識から生まれた概念であり、すなわち、その結果として発展途上国の社会・経済が不安定に陥っているという認識から始まった社会運動である。 現在のグローバル化された社会では、1部地域の混乱が国際システム全般を揺らがす危険性があり、人的、環境、安全保障、金融といった分野で密接に相互依存している状態である。 ここでフェアトレードの基本理念について記すと次のようになる。
また、環境重視の観点から継続性のある農業という視点も重要な要素となっており、日本においても完全に市民権を得た有機栽培とフェアトレードをかね合わせたフェアトレード商品が、ヨーロッパの主流になっている。 国際的潮流 1995年1月1日に発足されたWTOは、多国間貿易協定を推進しており、WTOでは、国際的貿易問題については、一括して中央で扱うことを繰り返し主張している。国際貿易市場でのルール制定機関であるWTOは、貿易については、差別なく、すべてを優先して自由化を推し進めることを信条としており、現在、この市場原理主義理論では、特に農産物の生産を行うにあたっては、社会的・環境的条件が、考慮される余地は、乏しいといえよう。 2003年の9月にメキシコのカンクンで行われたWTO閣僚級会議の決裂により、先進国では、自由貿易協定(FTA)を2国間で結ぶ動きが顕在化しているが、複数の自由貿易協定が網の目のように結ばれ、制度自体が複雑化し、結局は、貿易が十分に機能しなくなる、いわゆる「スパゲティー・ボール現象」も懸念されており、発展途上国側からは、強者が弱者を力でねじ伏せる動きが横行するのではないかとの懸念の声も聞こえてくる。 このような観点から、フェアトレードは、WTOや他の多国間協定では、取り扱うことができない社会的・環境的コストを加味した貿易ルールを国際貿易にビルドインしようと試みている。 また、WTOや他の多国間協定は、少しずつ環境、農業、国際金融そして現在では安全保障やサービス(教育、医療など)といった分野にまで影響を及ぼしている。 こうした国際的潮流において、フェアトレード先進国であるヨーロッパ諸国、特にドイツ、フランス、イギリス、スイスでは、フェアトレードをテコにして社会的連帯感、消費者意識、国内農業政策、国際貿易ルールなどの改革を政府、企業、消費者が一体となって取り組んでいるわけである。 フェアトレード運動 フェアトレードは、当初、草の根的活動であったが、現在では、世界的ネットワークを形成し、何千もの小規模生産者グループや貿易会社、そして何千万の消費者に直結する貿易システムを組織するフェアトレード・ラベル認定組織が一体となって活動している。 中南米、アフリカそしてアジアの40カ国で500万人の生産者が、フェアトレードの恩恵を享受していると推定される。IFAT(the International Federation for Alternative Trade)が、200以上のフェアトレード企業と生産者組織の代表として、また、FLO-I(the Fairtrade Labeling Organizations International)が、アメリカ、カナダ、ヨーロッパや日本の17各国フェアトレード・ラベル推進組織の代表となっている。2002年のフェアトレード製品の全世界での売上高は、4億ドルを突破したと推定され、その市場は急拡大している。世界での平均売上高は、2001年には、年率21%の上昇を記録し、オーストリア、フランス、ノルウェーでは、100%以上の急拡大を遂げ、アメリカでのフェアトレード認定コーヒーの売上高は、年率46%上昇し、スイス、カナダ、イギリスでのフェアトレードの伸び率は、年率30%を超えた。 FLOの役割 [新しい国際統一ロゴ]
フェアトレード運動は、これらの生産者、非営利流通業者、そして先進国の小売業者とのパートナーシップに基づいて発展してきた。これまでと違った貿易のあり方を考える組織(alternative trade organizations, ATOs )が、次々と各国で活動を始め、ボランティア団体が、主体となって運営されているワールド・ショップなどを中心として運動を展開してきた。 しかしながらATOsもワールド・ショップの活動にも限界があり、なかなか幅広く消費者の手元までには達しなかった。こうした経緯を経て、1989年にフェアトレード認定のコンセプトが生まれ、スーパーマーケットの買い物客が、直接にフェアトレード製品を認知できるようになった。 フェアトレードの認定書は、まず、オランダにおいてマックス・ハベラーというラベルを付けたフェアトレード・コーヒーを売り出すことによって始り、他の国々もオランダの例に倣い、現在では、フェアトレード商品は、マックス・ハベラー、トランスフェアー、フェアトレードといった名称で各国において大手流通市場にて販売されている。 現在、FLO、そしてそのメンバー(各国の推進団体、日本ではトランスフェアー・ジャパン)、フェアトレードを推進する他の組織は、持続的発展に資する生産活動を支援している。 FLOの役割は、次の4つに集約できる。
FLOの目的は、製品認定システムの構築を通して製品ごとにフェアトレードの基準を設定し、フェアトレード製品生産者を認定、そして、これらの基準が遵守されているかどうか定期的に検査を行い、同時に、フェアトレードから得られる利益で病院や学校の建設、子どもたちへのワクチン接種等の活動により発展途上国の人々の生活環境を改善していくことである。 2002年のFLOの予算は、223万ユーロであり(1ユーロ132円換算で2億9千5百万円)、この総額の45%は、各国FLO加盟団体からの負担金により賄われており、この負担金の拠出計算方法は、各国FLO加盟団体のラベル使用量収入に対する一定比率(約25%)をFLOに収めるものとなっている。 FLOの認定業務の活動(委員会、検査、人員)並びに運営費用やFLO職員の給料は、100%各国FLO加盟団体により負担されており、FLOの予算の55%は、補助金により賄われ、特にヨーロッパ連合(国際共通ロゴ導入、新商品開発、FLOフェアトレードフォーラムなどの援助)やイギリスの対外援助省(東アフリカの現地事務所を通じて)また、HIVOSやNOVIB(オランダの非政府組織)が、個別のポストやプロジェクトについてFLOに補助金を出している。 なお、2002年国際ベルギー国王財団主催発展大賞にFLOが選出され、FLOの国際的認知度の高さをうかがわせる。
上記のグラフから明らかなように日本のGDPを考慮した場合、FLOを通じての日本のフェアトレード貢献は、非常に遅れている。 各国のフェアトレード取り組み状況 スイスの場合 まずは、フェアトレード先進国であるスイスのFLO加盟団体であるマックス・ハベラー・スイスについて見てみよう。 スイスでは、マックス・ハベラー・ラベルのコーヒーの市場導入成功(市場占有率5%)に続いて1993年にはハチミツ(市場占有率10%)が、認定され、続いてチョコレート(フェアトレードにより輸入されたカカオと砂糖を原料として製造された板チョコの市場占有率1%)、1995年秋からは紅茶(紅茶市場占有率5%)が商品化されている。1997年秋からは初の生鮮食料品であるマックス・ハベラー・ラベルのバナナが登場した(市場占有率24%)。1999年2月にはオレンジジュースが市場参入(市場占有率7%)そして2001年4月には生花(切花の市場占有率5%)、2002年3月には、マックス・ハベラー・ラベルの米が市場参入を果たした(市場占有率3%)。 スイスの小売業においてマックス・ハベラー・ラベルの製品は、コーヒーが60種類以上、ハチミツが12種類以上、チョコレート、紅茶、バナナ、パイナップル、マンゴ、オレンジジュース、グレープフルーツジュース、切花、米、それぞれ各種と多岐にわたっている。まさにフェアトレード先進国である。 マックス・ハベラー・ラベルの商品の売上高は、2002年に1億1200万スイスフラン(1スイスフラン80円換算;89億6千万円)に達し、年間成長率は20〜30%を記録している。2001年度には、2700万スイスフラン(21億6千万円)を発展途上国の生産者や労働者に直接還元し、従来の貿易の枠組みに従事していたときよりも彼らの所得は、30%以上伸びたとのことである。 マックス・ハベラー・ラベル製品のスイス人消費者の莫大なる人気の秘密は、品質や生産過程への信頼とスイスの人々の公平なる貿易、フェアトレードへの深い理解によるものであろう。もともと自国の農業や地域社会や環境を守るために、消費者が進んで割高なスイス産乳製品や畜産物を日常的に購入する国民性もフェアトレードが受け入れられやすい土壌にあったと言えよう。 イギリスの場合 次に、新自由主義大国、自由貿易論の始祖リカードの国、イギリスでの状況を見てみよう。 イギリスでのフェアトレードの売上高は、過去2年間(2000〜02)で90%の伸び率を記録しており、2002年の売上高は、6300万ポンド(1ポンド185円換算:116億5千万円)であった。フェアトレード・ラベルの食料品は、大手スーパーマーケットやイギリス生協では、主力商品に育っている。 「フェアトレード商品の売上高の向上が、イギリス企業のフェアトレード商品への取り組みを加速させ、より多くの新しい製品が市場に供給されるようになり、また、発展途上国の生産者には、より多くのフェアトレードの機会を提供できるようになった。」とイギリスのフェアトレード財団のジョージ・アレギア氏は、語っている。 現在、イギリスでは、約60社の企業が、130種類のフェアトレード食品を消費者に供給しており、最近では、パイナップル、マンゴ、各種の砂糖菓子、そしてチョコレートケーキやクリスマス・クッキーなどもあるそうだ。マーケティング大国イギリスでは、消費者の嗜好に合わせ、フェアトレード商品の品揃えも充実しており、品質の高さにも力点を置いている。 [イギリスでの2002年の推定小売末端売上高―2000年より90%の上昇]
フランスの場合 “あなたには、品質を ヨーロッパ諸国においてフランスほど国民に正義感に訴える国はないのではないか?フランスの場合もスイスやイギリスと同様、フェアトレード運動は、コーヒーから始まった。コーヒーは、フランスでもフェアトレードの主要な製品であり、大手流通市場に1999年にデビューを果たして以来、順調にその売上高は、伸びている。
2001年には、コーヒーに続いて紅茶とバナナが大手流通市場参入を果たした。ラベル委託業者の増加と消費者啓蒙運動の成果が上がり、合計で125のラベル認定が行われフェアトレード商品が、大量にフランス国内に出回るようになった。また、フランス大手流通業者がフェアトレード・ラベル商品の取り扱いを開始したことによりフェアトレード商品の売上高は、2000年の590万ユーロから2001年には1200万ユーロに増加。2002年には、カカオ、オレンジジュース、砂糖、米、ハチミツのフェアトレード商品が、市場参入を果たした。 アングロサクソン版グローバリゼーションに反対する者の多いフランスでは、フェアトレードを現在の国際貿易から生じる不公平や不公正を正す役割を担う手段と捉える傾向が、他のヨーロッパ諸国よりも強い。すなわち次のような認識である。競争の激化する国際市場においては、低価格こそが巨大企業の戦略の中心となっており、この経済のグローバリゼーションこそが発展途上国と先進国との間の不平等をより加速させており、この結果、貧困は継続的に増大し、同時に第1次産品の市場価格崩壊を引き起こし、こうした製品の国際市場へのアクセスを断っているという認識である。フェアトレードでこうした不公平を解消しようとする国民的コンセンサスが出来上がっている。 また、イギリス同様に旧フランス植民地であるハイチでのコーヒー栽培やアフリカ諸国での精力的な活動は、旧宗主国としての政治的ニーズと合致している面がある。 特筆すべきは、フランスでのフェアトレード啓蒙活動である。2001年4月には、フェアトレード・フェスティバルが2週間にわたってフランス全土で開催され、フランス人の特徴をよくあらわしている。
とのキャッチフレーズで、パリ交通公団、メトロバス、クレディ・コオペラティブの協賛によりキャンペーンが開催され、パリにある4つの主要な地下鉄の駅の構内には、上記のポスターが、べたべたと貼られ、駅の構内にてフェアトレード・コーヒーの試供品提供並びに試飲会、教育的発表、パソコン情報案内末端設備を完備し、マックス・ハベラー紹介のフィルム上映、そしてラテンアメリカ音楽のコンサートなどが繰り広げられた。パリ交通公団によれば2万人の人々であふれかえったとの事である。この2週間のお祭りでフェアトレード運動は、マスコミに250回も取り上げられ、フェアトレード・コーヒーの消費量は、2001年上半期で35%近くの上昇を記録したそうだ。 また、上記のかわいらしい図柄の買い物袋を20万個も配布し、「買い物袋だけでできる国際貢献」と銘打ってパリ市長、イル・ド・フランス・地方委員会、大手スーパーのオウシャン、バイオコープ、モノプリ、コーヒー焙煎業者のメオ、マロンゴ、ロボディスとタイアップして啓蒙活動を行った。買い物袋には、“あなたには品質を、彼らには尊厳を、すべての人に公平を”と印刷されており、まさに「自由、平等、友愛」フランス共和国万歳!である。 大企業の取り組み FLO加盟のフェアトレード推進団体自体(日本ではフェアトレード・ラベル・ジャパン)が、貿易業務を行うのではなく、貿易業務、販売業務自体は、企業が市場原理に則って行う以上、大企業の取り組みなくしてフェアトレードは、ここまで拡大しなかったわけである。各国の大企業の取り組み状況を見てみよう。 外食産業 まずは、スイスのマクドナルドである。2003年3月からスイスのマクドナルド全店139箇所においてコーヒーは、すべてフェアトレード商品となった。実際には、マクドナルドは、マックス・ハベラーのラベルが付いたアロマ社のコーヒーを販売供給している。スイスのFLO加盟団体スイス・マックス・ハベラーは、マクドナルド社にラベル認定したわけではなくマクドナルドで販売されているアロマ社の製品にラベル認定したのである。 ヨーロッパ旅行された方ならばご存知であろうが、マクドナルドの店舗は、アメリカや日本のそれとは違い、ごく控えめな店舗外装が施されており、Mマークもかなり小さく、トレードマークの黄色い塗装も控え、他の店舗と見分けがつかないぐらいだ。街の景観を守るという社会規制もあるが、ヨーロッパにおいてマクドナルドは、社会問題を生み出す多国籍企業の代表として一般に認知されていることがその理由である。 グローバリゼーションの悪しき影響、数多くの告発、従業員の貧弱な雇用条件問題、中国の子供に作らせているおまけのオモチャ、世界での食文化の破壊などの理由でマクドナルドは、ヨーロッパでは集中砲火を浴びている。しかしながらスイスでのマクドナルドのフェアトレード商品への取り組みは、スイス・マクドナルドの経営方針及び商品供給政策に重要な変革をもたらしたと評価されている。 一方、アメリカでは、同様の理由でターゲットになっているのは、マクドナルドではなくスターバックス社である。アメリカに留まらず世界市場でも急速に店舗を出店し始め、現在では32カ国1690店舗を所有し、日本でもその存在はお馴染みである。 スターバックス社は、本国アメリカでは、グローバリゼーション反対運動の格好の餌食となっており、フランスでのマクドナルドと同様に店舗の看板等を頻繁に破壊されたり、またインターネットなどを通じて頻繁に誹謗中傷されている。 スタバ社への非難は、急成長への妬みに加えてスタバ社の特定地域に多数の店舗を出店させ同業個人営業のカフェを廃業に追いやった後、儲けに入るというなりふりかまわない積極的な店舗出店によりアメリカ地域社会を崩壊させているのが主な理由であるようだ。こうした経緯もあってスタバ社では、世間の批判を緩和するために2000年よりフェアトレード・コーヒーを扱う経緯となったが、実態としては、その取扱高は非常に少なく、他の大手業者よりもその買い付け割合は低く、スタバ社の対応を単なる市民の反感をかわすための「免罪符」としての取り組みに過ぎないと一部では糾弾している。 イギリスでは、コスタ社が、フェアトレード紅茶とコーヒーをメニューに加えたのに続き、プレタモンジェ社は、すべてのフィルターコーヒーを(売上高の15%)をフェアトレードに切り替えた。先進的な外食産業の多くが、既にフェアトレードの紅茶とコーヒーを扱い始めた。 イメージが重要である高級ホテルなどでもフェアトレードを扱い始め、Winder Hallの支配人は次のように語っている。「我々は、フェアトレード製品の理念と共に歩んでいることを誇りに感じております。我々のゲストが、彼らの友人にWinder Hallは特別だったと語ってもらうため、我々は、ゲストに本当に素晴らしい紅茶やコーヒーをお出しするのが、その一環です。」さすがジェントルマンの国である。 企業内取り組み イギリスでは、BBC放送、アストラ・ゼネカ社、メルリリンチ社、マイクロソフト社、エバーシェッド社、ネイションワイド・ビルディング・ソサエティー社、ドイツでは、フォルクスワーゲン社、IBM、ドイツテレコムなどが、従業員レストランにおいてフェアトレード食品を使用することに切り替えたそうだ。こうした例は、欧米の先進的な大企業では、当然の取り組みとなっている。 大手流通産業 大手流通産業こそが一般消費者と直結する最大のパイプであることは言うまでもない。ヨーロッパ各国において大手流通業者である生協やスーパーマーケットなどがフェアトレード商品を取り扱っている。 イギリス生協では2002年にすべてのチョコレートバーをフェアトレード商品に切り替えたのを皮切りに2003年11月にはインスタントコーヒー及び焙煎挽きコーヒーについてもすべてフェアトレード商品に切り替えた。売上は、順調とのことである。 フランスでは、4500の販売拠点があり、9つの大手流通産業、最近、日本にも進出したCarrefourもフェアトレード・コーヒーを扱っている。フランス全土でハイパーマーケットの8割、スーパーマーケットの3割でフェアトレード・コーヒーを販売している。 日本では、大手流通業社イオングループの店舗にてユニカフェ社のフェアトレード・コーヒーが健闘している。ちなみに筆者もユニカフェ社のFLO基準に基づいて生産されたフェアトレード・コーヒー「リントンマンデリン100%」を愛飲している。 大手コーヒー産業 2003年12月10日のジャパンタイムズに掲載された記事を引用する。(翻訳は筆者) 「コーヒーは、金のならない木となる。」 今週の火曜日に国際的人道支援機関は、コーヒーの急速な価格の暴落により多くの農民が麻薬などの非合法な作物を含む他の作物の栽培に移行を余儀なくされていると警告した。 オックスファムによれば、ラテンアメリカやアフリカなどのコーヒー依存型経済は、市場価格の低迷で危機に瀕しており、現在では、農民は、麻薬を栽培することで何とか暮らしているとのことだ。オックスファムは、コーヒー価格の低迷を意図的に維持しているとして4大コーヒー会社であるクラフト、プロクター&ギャンブル、サラ・リー、そしてネッスルを糾弾した。 Make Trade Fair Campaignの代表であるフィル・ブルーマー氏によれば、2500万の農民は、価格下落の衝撃をまともに受けたとのことだ。「コーヒーの価格は、ここ100年来最低を記録しており、コーヒーは、急速に金にならない換金作物となってしまった。」と語っている。 自由貿易推進派は、1990年来コーヒーの消費量が安定的に推移している一方で、コーヒーの生産量は、特に国際的機関の経済開発プログラムによりベトナムが世界で2番目のコーヒー豆栽培国となったこともあり、世界でのコーヒー豆の生産が、急速に伸びたのが原因であると主張している。 欧米では、組織や労働組合による内部告発キャンペーンが一部の大企業や外食産業に向けて頻繁に展開されており、一般消費者や市民団体によって多国籍企業にフェアトレード商品の購入や購買、フェアトレード商品の開発を迫るキャンペーを国際的貧困撲滅団体オックスファムや他の非政府組織などが共闘して多国籍企業に圧力をかけている。 詳しくは、オックスファムのインターネットサイトを参照してほしい。大変充実した内容となっている。その中から筆者が翻訳した主な文献の一部がトランスフェアー・ジャパンのサイトで閲覧できる。 2002年11月にワシントン・ポストに掲載された記事がオックスファムの主張を簡潔に表しているのでその記事を引用する。(翻訳は筆者) 第3諸国のコーヒー農家にフェアトレードを! 発展促進貧困救済団体のオックスファムが “コーヒーカップに詰め込まれた貧困”という最新のレポートを発表した。過去3年間にコーヒーの国際取引価格は半値になったが、このことが世界中の2500万人の小規模コーヒー生産者を貧困に陥れた。 コーヒー危機は歴史的考察を要する。1962年に世界の需要と供給のバランスを取るために国際コーヒー協定が締結され、結果としてコーヒーの価格は高値安定を保った。 アメリカ政府がコーヒー価格の操作は国家の安全にとって重要でないと言う観点から1989年に協定は破棄され、アメリカは自由貿易というイデオロギーを擁護し、また、アメリカはIMFや世界銀行を使って発展途上国に対して“構造改革”を促した。IMFや世界銀行は発展途上国の“生産比較的優位”を利用して輸出型経済発展を図るという一般的なモデルを提案した。この戦略は、貧困国がコーヒー豆の生産を増やすこととなったが、驚くことなかれ、これらの生産上昇分は世界的供給過剰を招き、コーヒー豆の値段は歴史的な低価格に押しやった。 ほんの10年前までは、コーヒー豆生産国は年間小売売上300億ドルの内で100億ドルを受け取っていたが、現在では年間小売売上高は約2倍の550億ドルに達したにもかかわらず、コーヒー豆輸出国は60億ドル以下しか受け取っていない。 さて、コーヒー豆生産者が飢えに苦しんでいる一方で誰が一体莫大な利益を得ているのであろうか? それは世界最大のコーヒー会社、プロクター&ギャンブルでありクラフトでありサラ・リーそしてネッスルである。 システムを変えなければならない。私はコーヒー会社、国際機関、消費者と会合を重ね、この人的危機を少しでも解消するためにオックスファムが主催する運動に加わるように説得している。 この4大コーヒー会社がコーヒー豆生産者に対して正当な対価を払いこの人的危機に対処する姿勢を示さなければならない。フェアトレード認可証は、現在、パウンドあたり20セントから30セントしか受け取っていない農民が1.26ドル(有機豆は1.41ドル)の最低賃金を受け取ることを保証する。 コーヒー消費国はコーヒーの質を監視し質の悪いコーヒー在庫を排除すると同時に供給過剰問題解決に向けて政治的財政的援助を行なう。アメリカ政府は国際コーヒー組織に再参入しこの世界的危機に相互努力しなければならない。 世界銀行や国連などの国際機関は生産物価格や債務免除の問題などの長期的取り組み計画を実行し来春のコーヒー危機の国際会議を成功させなければならない。 フリートレードは何百万人ものコーヒー生産者を経済的破滅に陥れた。 コーヒーのフェアトレード時代である。
公官庁御用達 各国政府内でも積極的にフェアトレード商品を購入し、フェアトレードを後押しする動きは著しい。 民営化先進国イギリスにおいても地方や中央政府の職場においてフェアトレード商品を積極的に購入している。英連邦諸国議会下院や国際開発省に続いて、2002年には、外務英連邦議会、内務省、貿易産業省などのすべてが、イギリス地方行政機関同様にフェアトレード・紅茶ないしコーヒーを飲んでいるとのことだ。 当然、公務員大国のフランスでは、この傾向は、徹底しておりヨーロッパ議会、フランス大統領官邸、フランス首相官邸、フランス国民議会、フランス上院、フランス外務省、フランス環境省、イル・ド・フランス、ノルド・パ・カレイ、ロワール、各地方委員会、ストラスブルグ、パリ、ベルサイユ各地方学生厚生センター、多数の地方自治体等でフェアトレード・コーヒーをガブガブ飲んでいるとのことである。 トランスフェアー・ジャパンの松木代表は、こうした傾向に対して「コーヒーや紅茶といった嗜好品は、まずければいくらコンセプトが良くても誰も飲む者はいない。」と語っている。 1998年7月4日ヨーロッパ議会による決議で「フェアトレードは、発展を促進する最も効率的な社会的装置の一つとして認知されているが、ヨーロッパ議会は、フェアトレードをヨーロッパ連合の発展政策に組み込むべきである。」との宣言もなされている。 2003年のフランス公益キャンペーンでは、ジョン・ピエール・ラファラン・フランス首相によりキャンペーン大賞にフランス・マックス・ハベラー協会が選出され、フランス・マックス・ハベラーの決算報告書からも官民一体となった取り組みが読み取れる。 新自由主義総本山のアメリカでは、政府の力を借りるのではなく、キリスト教団体やボランティア組織によりフェアトレード運動を推進している。おもしろいのは、学校などで生徒たちと勉強会を開いて「なぜ、御社ではフェアトレード食品を扱わないのだ?」と食品会社などへ集団で手紙を送りつけるなどの方法で組織的アタックを企業にかける手法をとっている点だ。あくまで市場原理の中で問題を解決しようという考えなのであろうが、いかにもアメリカらしいやり方である。 日本版フェアトレード 今回紹介したようにフェアトレードは、単なる人道主義という枠を超えたグローバルな政策目標である継続的発展を実現するための政策とヨーロッパでは考えられており、日本においてもフェアトレードでの国際貢献が求められているのは言うまでもない。 ヨーロッパ諸国が主流となって活動していることもあって必然的にアフリカやラテンアメリカの生産者支援の側面が強く、日本の地理的・歴史的背景から東南アジア諸国でのFLOの枠組みを利用した日本の積極的な活動が求められている。 日本の農水省は2005年をメドに、生産履歴を正確に管理・開示している農産物を政府として認証する新制度を導入する。この国内産優良農産物を認定する方式は、「公平なる貿易」という概念を除けばFLOの国内版とも言え、狂牛病騒ぎもあり消費者の食の安全への関心の高まるなか、自由貿易協定締結による国内市場開放をにらんだ国内農産物の競争力強化にもつなげようとする政策と言えよう。 日本版フェアトレードを育てることにより、今後予想されるWTOや自由貿易協定による荒波から生じるであろう日本の農業の競争力強化や日本人消費者の利益といった問題に対してフェアトレードのコンセプトを国内でも応用すれば一定の解決策が見出せるのではないであろうか。国際的に見て政府による国内農業保護政策も限界にきている。 日本でも「企業の社会的責任」が、大流行である。政府、企業、消費者の3者が一体となったフェアトレードへの取り組みが求められている。 参考文献
筆者へのコンタクト:msbgmbh@carrot.ocn.ne.jp |