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■ 企業の社会的責任で高い評価を得ているイギリスの流通業テスコ
林 昌宏(ボランティア)
テスコ社の社会的責任についての概要
イギリスをベースとする国際的小売業者でイギリス、ヨーロッパ、アジアに約2300の店舗を有し、30万人の従業員を雇用する。Tesco.com.は、世界で最大の食料品e-tailerである。2003年には、企業の社会的責任活動の一環としてイギリスでバイオ・ディーゼル燃料の試験的販売を行い、Woodland Trustと協力して4000万本のクリスマス・ツリーをリサイクルし、地域の学校に1700万ポンド相当のコンピューターを寄付した。テスコは、毎年最低4回は、上級管理職によるさまざまな観点から企業の社会的責任を研究する委員会を開催している。テスコは、2002年に初めて企業の社会的責任についてのレポートを発表し、FTSE4good and
Ethibel indexes for ethical and socially responsible investmentにリストアップされた。
「テスコ社において、我々は、ポジティブな社会貢献を目指している。わが社の社会的責任プログラムは、こうした理念の下に生まれ、“ほんのちょっとした一連の手助けEvery Little Helpsアプローチ”によって支えられている。
−テスコ代表 John Gardiner
ここ12年来続けているテスコ社の企業の社会的責任について総括すると2100万ポンドをチャリティーに寄付し、7700万ポンド相当のコンピューター機器を地域の学校に寄付し、年間平均1万の雇用を生み出しているとのことである。
テスコ社について
イギリスを母体とする流通業者で現在では、世界10カ国で操業しており、イギリスに1982店舗22万1千人の従業員を抱え、世界流通業ランキング第6位。2002〜2003年度年商234億ポンド前年比7.9%、イギリスでの税引き前利益6.9%向上の129万7千ポンドを計上、イギリスでの最大の雇用創出企業となっている。
テスコ社の理念は、徹底した顧客中心主義にあり、換言すれば顧客を自ら創り出すという戦略にある。イギリスの荒廃した地域に積極的に進出して、地域の教育活動や国内農業などに対して企業の社会的責任という役割をテコにして投資行為を行い、自ら需要を創り出すという単なる“商売”を超えた、いわば経済政策を実行している点に最大の特徴がある。2回目になるレポートの中でも、こうしたテスコの社会的責任に対する取り組みを“win-win
approach ”と位置づけている。(勝つものばかりで負けるものがいない状態。)
フェアトレードについての取り組み
フェアトレードについてもテスコ社ではwin-winビジネスと認識している。テスコ社では、イギリス・フェアトレード財団と協力して紅茶、コーヒー、チョコレート、バナナといったフェアトレード商品を扱っている。
レポートの中にも、フェアトレードの理念である国際市場価格に翻弄されることなく、適正な値段で第3諸国の小規模生産者から買い付けることにより、彼らの生活を守ろうと紹介されており、フェアトレード商品に付加されている社会的プレミアムが、発展途上国のインフラ設備、教育設備、医療設備に役立っていると記されている。
イギリス・フェアトレード財団と協力することにより、テスコで扱うフェアトレード商品がフェアトレードとしての国際的正当性を有することをテスコの消費者に約束している。
今年になりテスコでは、フェアトレード・バナナを扱っており、週に50万本以上の売れ行きを示しており、さらなるフェアトレード商品の充実をにらんでいるとのことである。
昨年度に引き続き、2004年度も3月3日から17日まで行われるフェアトレード週間キャンペーンに協賛し、発展途上国の生産者支援にイギリス全店を挙げて協力するとのことである。
テスコで購入できるフェアトレード商品一覧
- Anthony Worrall Thompson teas
- Cafedirect instant and ground coffees
- Clipper Fairtrade tea
- Comic Relief Dubble choc bar
- Fruit Passion tropical juice
- Green & Black’s organic cocoa
- Green & Black's chocolate
- Hampstead organic teabags
- Percol Fairtrade coffees
- Rombouts organic coffeeTeadirect tea
- Tesco Fairtrade bananas
- Traidcraft Geobars
テスコ社のフェアトレード供給先企業
カフェディレクト
カフェディレクトは、イギリスでのフェアトレード商品を扱う最先端の企業である。カフェディレクト社では、栽培者の組合や小規模生産者組合から仲買人を通さず、直接にグレードの高い紅茶やコーヒーを買い付けている。買い付ける価格は、国際市場価格が暴落、低迷しようとも、あらかじめ決められた最低保証価格で買い付けており、買値の10%を社会プレミアムとして支払っている。代金の前払い、価格の定期的見直し、ビジネス発展プログラムを通して栽培者の保護に励んでいる。
栽培者は、不安なく最高の品質の紅茶やコーヒーを生産し、消費者もまた安心して紅茶・コーヒーを楽しめる。
ザ・デイ・チョコレート・カンパニー
西アフリカの小規模カカオ栽培者と提携してチョコレート・バーを生産し、イギリス市場で販売している。ガーナのカカオ生産者であるクアパ・ココ協同組合が、ザ・デイ・チョコレート・カンパニーの株式3分の1を所有しており、こうした発展途上国の小規模生産者が、先進国の会社の株式を所有するのは始めてとのことである。
教育について
イギリスの最先端企業として将来の雇用対策としての教育を重視している。1992年以来はじめたコンピューターを学校に寄付するプログラムは、イギリス全土で3分の2の学校において導入済みであるとのことだ。2003年には、さらに700万ドルのコンピューター関連機器を寄付し、累計8400万ポンドに達するとのことである。イギリスの若者のIT能力開発に貢献し、即戦力ある社会人を育てる。まさにwin-winアプローチなのである。
環境対策
テスコ社の環境への取り組みでユニークであり、特筆すべきは廃油や菜種油から燃料を作る代替燃料、グリーエナジーである。この再利用により作られる代替燃料の会社に出資しており(25%を所有)、このバイオ・ディーゼル試験販売が好調に推移すれば全国の店舗での販売を視野に入れているとのことである。
日本の大企業が、地域の公園に木を植えましたと堂々とレポートに掲載しているのとは、かなりの環境意識格差があるように感じられる。
終わりに
テスコ社の社会的責任のレポートは、文章も平易に書かれており、内容もあまり観念的にならず、あくまで実用主義の哲学が貫徹されている。コスト削減至上主義の限界と弊害も熟知しているようであり、経済政策を思わせるような長期的視野での社会的責任の取り組みは、まさにwin-winプロセスと言えよう。
フェアトレード商品の扱いについても市民にとってはブラック・ボックスとなる独自ブランドで取り組むのではなく、消費者に納得してもらうために外部団体であるフェアトレード財団と積極的に提携しているあたりは、業界のリーダーとしての風格が漂っている。
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