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■ フランス・カルフール社の「2002年度持続的発展に関するレポート」を読んで
はじめに 世界第2位の流通産業であるフランス・カルフールの持続的発展についての基本的理念及び具体的取り組みについてこの2002年度のレポートは、さまざまな観点から構成されている。(A4で計60ページ) その大部分は、日本での認識・取り組みと合致している。環境、特にゴミの量の削減などに対する取り組み、出店先の地域社会への配慮といった具体的な行動では、カルフール社よりも日本の大手流通業の方が、かなり先行しているように思われる。 しかし、注目しなければならないのがグローバリゼーションに対する認識・理念である。ヨーロッパでは、グローバリゼーションこそが個人商店や中小企業を潰し、ヨーロッパ固有の食文化を破壊し、地域社会崩壊させ、なおかつ農産物の供給先である発展途上国の農民をさらなる貧困に追い込んで、結果としてヨーロッパの大都市にこうした発展途上国からの経済難民の数を増やす結果となっているとする社会的認識がある。 国際規模で活動しているカルフール社では、こうした世論を踏まえ、「持続的発展」にポジティブなグローバリゼーションという概念を持ち込んで世界戦略を構築している様子である。 今後、日本の大手流通業者も国内、国外において経済活動を行うにあたって、グローバリゼーションの進展に伴い生じるであろう社会的軋轢に対する対策が必要となってくるのではないであろうか。 カルフール会長のインタビュー レポートの巻頭にあるカルフール社の会長ダニエル・ベルナード氏のインタビューが、こうしたグローバリゼーションの傾向を如実に物語っている。 注:オリジナルは仏文と思われるため仏文から翻訳した。英文も参照したがニュアンスが部分的にかなり変化している箇所が散見できた。
ダニエル・ベルナード:持続的発展とは、政治的課題であるばかりでなく、すべての人々に関する極めて日常的な課題であり、特にカルフール社にとっては、なおさらのことであると考えております。我々は、こうした課題に対して最前線に位置しており、なぜならば生活の質の改善への使命、そして世界での食料流通業界のリーダーとしての役割が付与されているからです。 持続的発展を実践するのあたってのカルフール社の主な困難とは何ですか? 我々の最大の挑戦は、持続的発展を日常業務に埋め込むことであり、単なる副次的散発的な行動に終わらせないということである。こうした目標のために各国において、また各店舗において持続的発展に向けた行動に移すためのプロジェクトグループを組織し、さまざまな方策をとらなければならない。品質管理、梱包や包装への配慮、ゴミ減量、顧客の啓蒙といったことは、毎日の課題である。例えば、ベルギーの店舗では、従業員自身が、持続的発展のための取り組み計画を立てている。資料1参照 どのようにしてこうした先進的取り組みを経営のなかで管理しているのですか? 我々にとって2つの主な争点があります。まず、持続的発展は、長期的視野を必要とするが、その目的達成には、日々の努力が必要であるということである。我々としては、長期的に、また短期的に取り組まなければならないのです。我々は、商売を行うものとして消費者の期待を予想しなければならず、またそれに対応していかなければならない。そして我々は、新規店舗開設やロジスティックスの改善に長期的視点で取り組まなければならない。次にカルフール社では、「1歩先を行く」取り組みと呼んでいる持続的発展に取り組む行動を維持していかなければならない。カギとなるアイデアは、理想と現実主義のバランスが保たれてさえすれば、競争他社よりも先進的に取り組むについて大きなリスクはないということである。すなわち競争他社より遅れることなく、かつ先進的過ぎないということである。 消費者の購買力を守ること、しばしコストの掛かる品質の向上、この2つをどのように両立させるのでしょうか? このバランスを見つけるのは、我々の仕事です。現在まで我々は、うまくやっていると思います。「カルフール品質経路」というブランドを立ち上げたところ、競争他社よりも価格が高いゆえ、短期的には混乱が生じたが、我々は、消費者に啓蒙することに賭けた。結果として長期的には、成功した。今日、「カルフール品質経路」ブランドは、いくつかの国では家庭用品の分野で80%を占めるまでに成長し、この成功が、これらの製品の価格低下を促している。消費者教育や我々流通業の商慣習を向上させることもリーダーである我々の役割である。 消費を民主化させることがカルフールの使命であるとのことですが、大手流通業者は、西洋の消費慣習を持ち込んでいる、これは、持続的発展とは相容れないのではないか? という懸念の声も聞こえてきますが。 我々が他国に進出していく際に最も重要な理念は、生活の質の向上、環境重視、衛生観念の向上、地域文化を充分尊重しながらの食の安全といったその地域の基準を底上げすることをお手伝いすることである。我々の目的は、全世界で同一商品を販売することではなく、商業、貿易、民主主義、自由経済そして文化を刺激しながら持続的発展の3つの柱に基づいて地域での発展を促すことである。人類の歴史から学ぶところは、貿易が盛んなときには、国家間、地域間の交流が盛んになり、更なる生活の質の改善が見られた。カルフール社では、ポジティブなグローバリゼーションに貢献している。なぜならばカルフール社は、地域社会と密接した関係を持っており、まさにその地域社会で操業しているからである。地域社会の中核において我々は活動しているわけだ。 資料1 ベルギーにおけるフェアトレード GBとカルフール(大手スーパーマーケット)フェアトレード商品の扱い品目を増やす GBとカルフールはそれぞれフェアトレード商品の扱い品目を増やすことになった。GBでは3品目であったものが19品目に、カルフールでは30品目まで増やす。オックスファム・フェアトレードブランドとワールドショップブランドで発売され、外部監査は、フェアトレードの厳格な基準設定で定評のあるマックス・ハベラーが担当することになった。 ボリビア、グアテマラ、タイ、ブラジルなどの国々の多くの生産者が、今後ますますフェアトレードを通して消費者と結びつくことができるようになった。マックス・ハベラー・ラベルのコーヒー、バナナ、紅茶、カカオ、砂糖、米、フルーツジュースもまたスーパーマーケットで購入可能である。カルフールとGBは今後、大手流通業者としてより多くのフェアトレード商品を扱っていくことになった。詳しくは www.oww.be カルフール社における持続的発展の定義 持続的発展とは、多国籍企業が各地で生み出す社会的軋轢、すなわち新自由主義的な教義に裏打ちされた国際的な競争に伴う弊害を補うという形で発展してきた概念でもあるが、国ごとにその定義には、微妙な変化が見られる。 カルフール社の場合の持続的発展政策について紹介する。以下は、その翻訳である。(上記と同じ理由により仏文より翻訳) 2002年にカルフールは、経済的採算と社会的規範、環境重視のバランスが取れた発展である持続的発展に対する取り組みについて始めてのレポートを公表した。2001年には、品質と安全、環境重視と我々の社会的責任、持続的発展政策という3つの取り組みに焦点を当てたが、今後はこれらをカルフール社のプロジェクトに組み込んでいくこととする。 カルフールのプロジェクトに組み込まれた取り組みについて 我々の世界観 経済が拡大し、ますます社会が複雑化するなか、グローバリゼーションは、発展のための推進力となると同時に不安定な要素ももたらしている。国際貿易に従事するカルフールとしては、フェアトレード並びに持続的発展の枠組みにおいて、より多くの人々に消費財を提供していくことが、その使命である。 我々の価値観 カルフール社の価値観とは、カルフール社の創業・運営に携わってきた人々や社会の遺産である。
我々の野望 すべての我々の努力は、顧客が満足することに集約される。我々の野望とは、我々のどこの市場においても現代の流通業という観点から次に掲げることを実現することである。
カルフール社では、品質志向と持続的発展という哲学を掲げて各国で活動している。この方針の権限は、取締役社長にあり、こうした経営哲学に基づいて具体的政策が決定されている。
持続的発展のために
第3者評価 2002年度から環境・社会に関する持続的発展レポートを発表しているカルフール社では、4つの外部評価をその報告者に載せている。企業の社会的責任を怠ると不買運動さえ起きかねない状況であるが、これまでの株主だけでなく、地域、従業員などの幅広い利害関係者を念頭においた対応がカルフールの報告書の中にも散見される。流通業を監査する外部団体の主な具体的着目点としては、以下の通りである。
その中の1つであるダウ・ジョーンズサステイナビリティー・インデックスのためにレポートを出しているスイスの企業評価会社であるサステイナビリティー・アセス・マネイジメントによればカルフール社の雇用体系、リスクマネイジメント、供給体制マネメジメントについては、依然として取り組みが不透明であるが、環境や社会の取り組みについては、同業他社より進んでおり、特に商品供給者の環境に対するインパクトや彼らの労働条件に対する配慮、遺伝子組み換え商品の扱いを顧客の判断に任せるといった点で大いに努力しているとのことである。 4つの評価に共通して言えることは、カルフール社の2002年から始めた持続的発展のためのレポートを高く評価している。 責任ある消費 各種の製品をより安く販売し、消費者の購買力を高め、大衆の生活水準向上に寄与することが流通業の第1の使命であることは自明であるが、現在では、遺伝子組み換え食品に対する取り組み、狂牛病、鳥インフルエンザ等の食の安全、そして全世界のカルフールの顧客92%が関心を示している製品の生産地を含めた環境問題に対する取り組み、及び生産者を不当に搾取しない責任感のある消費が重要なファクターとなっている。 この責任感ある消費という概念が、残念ながら日本の流通業には、まだ登場していない。ヨーロッパ連合15カ国には、3500万人の貧困者がいるとのことではあるが、不況ながらも経済大国の日本でこうした責任感ある消費が叫ばれる日もかなり近いはずである。 カルフール社では、こうした顧客の要望に応えるために社会的付加価値をつけた商品を取り扱っている。具体的商品について筆者が、カルフール本社に問い合わせたところ以下のような答えが返ってきた。 「フェアトレード商品といたしましては、現在のところ我々のハイパー・マーケットにおいてマックス・ハベラー(フェアトレード・ラベルである)認定のコーヒーであるCafe MalongoとCafe Meoの2種類を扱っております。 2002年には、Malongo社の紅茶、同様に2003年の2月からは、マックス・ハベラー認定のチョコレートEliteの取り扱いも始めました。 また、発展途上国との連帯感を保つ社会運動を目的として開発された我々独自のブランドであるカルフール・バイオ印商品としてカルフール・バイオ・カフェやLa quinoa カルフール・バイオなども取り扱っております。」 終わりに 企業が社会的責任を果たすことについては、誰も異論がない。こうした責任感ある対応が企業の業績を左右する時代でもある。しかし、日本においては、何が企業の社会的責任であるかについては、十分な議論ができていないのが現状である。少なくとも世界で活躍する大手企業の社会的責任については、地域、国内だけに留まらず、幅広い視野が要求されているのは言うまでもない。 |