| ■世界のコーヒーについて(2003年3月HP掲載)
1. はじめに 1.1 コーヒーの国際市場 石油に次ぐ第2の世界市場であるコーヒー市場は、生産の3分の2を占めるアラビカ豆と3分の1を占めるロブスタ豆の主に2種類の豆で構成されている。コーヒー豆の栽培の大部分は、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアで行われているが、消費者の85%は、産業国に在する。コーヒーの世界総生産高は、年間550万トンである。 協同組合を組織する生産者の大部分は、天候不順、生産量の変化、投機対象などによる価格変動の最初の犠牲者である。収穫が多いときには、生産者は彼らの生産物を安値で売ることを余儀なくさる。収穫が少ないときは、価格は上がるが、少ない売上高では生産者の所得を向上させるには至らない。生産者は、資金繰りが苦しいため、貪欲な中間業者と市場にて値決めをする時間も無く、結局はコーヒー豆を安値で売り払ってしまう。そして生産者の債務は増加する。 1.2 マックス・ハベラーの役割 社会的経済的な条件を満たすフェアトレードの国際基準に合致する農民組合に対してマックス・ハベラーのラベルが与えられる。生産者とプランテーションで働く労働者に安心できる商業的条件を提示することが、まず重要であり、少なくとも生産コストを上回る価格での取引を行い、これにより生産活動によって確かな生活が保証され、労働条件の改善、職業訓練、社会活動や環境保全運動といった持続的発展に資する行動を起こすことが可能となる。公平なる取引でなされたコストは、スイスでの最終小売価格に反映される。この一連の商品の流れで最終段階に位置する消費者こそがフェアトレードを支えることになる。 1.3 マックス・ハベラーについて マックス・ハベラー財団(スイス)は、発展途上国で生産され、社会や環境の規範を遵守して栽培され、公正なる方法で商品化された製品についてラベルを供与する。 スイスでは、小売業者といくつかの焙煎業者が、マックス・ハベラーのラベルが付いた製品を販売している。 財団は、1992年に創設され、Pain pour le Prochain, EPER, Action de Careme, Caritas, Helvetas , Swissaid の6つの大きな慈善団体の協力により立ち上げられた。 財団代表の監督の元に財団本部では、さまざまなサービスが、企画運営されている。
財団の委員会は、創設者である非政府組織の代表者により構成されている。委員会は、大まかな活動の方向性を示唆し、事業の概略と財団の戦略を承認する。財団本部はバーゼルに在り、フランス語圏の事務所はローザンヌ地方にある。 1.4 マックス・ハベラー・ラベル登場 1989年にコーヒーの国際協定は破棄されたのを受け、オランダの非政府組織は、オランダ市場においてマックス・ハベラー・ラベルを立ち上げた。オランダに続いてベルギー、ルクセンブルグ、スイスなどが活動をはじめ、他の団体は、別の名前で活動している。(トランスフェアー、フェアトレード財団など) 1992年の2月、マックス・ハベラー財団スイスは、Pain pour le Prochain, EPER, Action de Careme, Caritas, Helvetas , Swissaidにより設立された。スイスのコーヒー市場もすぐにこのフェアトレードのアイデアを受け入れ、また、消費者の明らかな需要を予感してマックス・ハベラー・ラベルのコーヒーが、財団設立後すぐに登場した。この試みは成功し、フェアトレード・コーヒーは、1300トン以上販売され、コーヒーの小売市場の5%近く、スイスにおける市場占有率3%を記録した。 10年後、このフェアトレード市場は、先進国や発展途上国においても内容が充実し、また発展した。多くの生産者が統合され、多くの製品が市場参入し、フェアトレードの仕組みが構築された。
マックス・ハベラーに承認されたフェアトレードには4人の当事者がいる。
フェアトレードの当事者の役割は、明確に規定されている。:一方には発展途上国の生産者がいて、他方には、先進国においてマックス・ハベラーのライセンス取得者である輸入業者と焙煎業者がいる。これらの両者の間に、すなわち生産者と消費者の間に橋を架ける役割を担うのがフェアトレードのマックス・ハベラー・ラベルであり、マックス・ハベラーは、ラベル認定された製品の貿易に直接関与するのではなく、フェアトレードの条件を提案し、発展途上国の生産者と先進国の当事者との間に商業的契約を締結させ、FLOと共に生産者の生産管理業務にあたる。 こうした一連の流れにおいてスイスでは、消費者の地位が不可欠である。:フェアトレードにより余分にかかる費用は、認定された製品の販売価格に転嫁され、従来の貿易を経た商品よりもほんの少し高くつく。消費者は発展途上国の生産者を全面的に支持することになる。 2.2 コーヒーのフェアトレード基準 公正なるシステム全体は、基準と管理という2つの主な柱に基づいている。FLOのフェアトレード国際基準とは、FLOの規範であり、継続的発展に資する3つの根源的概念に基づいている。
生産者組合が、FLOのコーヒー生産者認定を受けるためには次のような条件が必要である。
マックス・ハベラーのライセンスの恩恵に与る焙煎業者、流通業者、輸入業者にとっての必要な条件は次のようである。
フェアトレードの最低価格は、アラビカ豆でFree on board価格ポンドあたり1.24ドル(中央アメリカ産は1.26ドル)ロブスタ豆で1.10ドル、有機栽培アラビカ豆は1.39ドル、有機栽培ロブスタ豆は1.25ドルとなっている。 この価格設定は、FLOに認定されているコーヒー生産者代表者たちと2年に1回行われる会合において見直される。国際価格がマックス・ハベラーの最低価格より上昇した場合には、フェアトレードの買い付価格は、従来のコーヒーにおいては、ポンドあたり5セント高く、有機栽培のものについては、ポンドあたり15セント高く買い付けることとなっている。 2.4 販売価格 マックス・ハベラー財団は、販売価格には干渉しない。生産者へ支払うフェアトレード価格分の費用やライセンス取得にかかる費用は、最終価格に反映され、販売者の利益も考慮して販売者であるライセンス取得者が、最終的に販売価格を決定する。ここでもう一度強調すべきは、消費者の役割である。一般的にスイスでのフェアトレード・コーヒーの価格は、キロ当たり14〜22スイスフランとなっている。 有機栽培のものについては、販売場所によっては23%〜36%もの上昇を記録している。 2.5 監査 先進国においても発展途上国においても年に1回立ち入り監査が行われる。監査に訪れることによって、パートナーとの直接的な関係を構築し、発展させ、情報をお互いに開示し、発展途上国と先進国の持続的な商業関係を構築することとなる。 発展途上国における監査項目
マックス・ハベラー・ラベルは、発展途上国の恵まれない地域の生産者と先進国の購買者の間でコーヒーの直接的商業関係を確立させることを推進している。マックス・ハベラー財団スイスのパートナーを紹介したい。 発展途上国におけるパートナー
ラ・フロリダの協同組合は1993年以来FLOのパートナーとなっており、この大きな協同組合の本拠地は、ジュニン地区のMercedに置かれ、36の市町村の住人である1730人のメンバーを擁している。農民メンバーの大部分は、標高800〜1600メートルの地区で2〜4ヘクタールの土地で耕作を行っている。生産物の大部分は、有機栽培「チャンチャマヨ」種からの豆である。Immo Control やNaturlandは、有機栽培認定栽培者である。1990年代後半、ラ・フロリダのメンバーたちには、収穫脱穀施設の破壊、プランテーションの放火、農民誘拐などの“明るい道”と呼ばれる勢力による恐怖の下で暮らしていたが、これらの惨事から逃れるために「大農場」からの脱退を余儀なくされた。収穫量は490トンから300トンに激減した。ラ・フロリダは、FLOの基準に沿って高品質の有機栽培豆を年間328トン栽培したことを受けて、この共同組合の状況は、幸運なことには正常化した。強力に組織され管理されているこの協同組合は、ジュネーブにある「人間と土地」の養成プログラムの恩恵を受けている。ラ・フロリダの強力な手段の一つとして発展した伝達手段(ファックス、インターネット、ウェッブサイト)が挙げられる。いったん“明るい道”の抑圧から解放されたラ・フロリダは、見違えるほど強化された。 フェアトレードの報奨金はさまざまなプロジェクトに使われている。
2.7 原産地 スイスで販売されているマックス・ハベラー認定のコーヒーは、中央アメリカ、南アメリカ、カリブ諸国、アフリカが原産地であり、国としては、ボリビア、コロンビア、コンゴ共和国、コスタリカ、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、ペルー、タンザニア、ベネズエラとなっている。 2.8 種類 スイス市場にあるマックス・ハベラー認定の高品質コーヒー
マックス・ハベラー財団では有機栽培を推進しており、この動きは、社会、環境、持続的発展といったフェアトレード基準に呼応するだけでなく、消費者のこうした需要に応えるものである。 有機栽培への転向には、約3年かかる。有機栽培は、単に基準値を超える化学物質の使用をやめるだけでなく、有機栽培には、農民による積極的な農地改良が必要である。例えば、コーヒー豆の繊維から堆肥を作ったり、「Bauveria」と呼ばれるキノコなどを使い農地を肥やし、また、土壌の窒素を増やしたり日光から土壌を守ったり土壌の水分を保つ野菜類を植えるなどして自然の「森」のような循環を造ることである。 マックス・ハベラーのコーヒー農園とその有機栽培農園は、毎年、Bourgeon Biosuisse,Naturland(D),ecocertなどの国内または国際有機栽培認定機関により認定を受けている。 認定書発行は、有料であり生産者負担である。 有機栽培のため生産者に対して余分に掛かる費用は、有機栽培推進報奨金としてフェアトレードの先進国のパートナーにより賄われる。 フェアトレードの安定性は、有機栽培に転向することにより可能となる。 3.コーヒー市場 3.1国際的進化 1962年にラテンアメリカ、アフリカなどの国策として取り組んでいるコーヒー生産国が価格低下や供給過剰を防ぐ目的で国際コーヒー協定が締結された。この協定は、25年間以上にわたり市場の最低価格、在庫調整、品質管理を司ってきた。 1989年7月に原産国生産割当て無視に続いて、生産者と消費者間のコンセンサスの欠如もあり、協定は破棄された。こうしてコーヒーの国際市場は、完全に需要と供給の法則が支配することとなった。相場は崩壊した。1989年5月までは、平均してポンドあたり1ドル15セントであった価格が、1989年10月には61セントと暴落した。この底なしの危機により数多くのコーヒー豆栽培農民が、貧困に陥った。2003年、コーヒーの国際市場は、依然として回復の兆しを見せておらず、生産者は、生産コストをカバーできない状態が続いており、農民貧困問題の混迷は、さらに深まっている。 3.2 スイス市場 スイスは、コーヒー豆全世界生産量660万トンのうち約1%である6万3000トンのコーヒー豆をスイス市場に輸入している。8000トンは、インスタント・コーヒー、カフェイン抜きコーヒー、焙煎コーヒーとして再輸出されている。スイスでは、残りの約5万5000トンのコーヒー豆を消費していることになり、年間ひとり当たり約8kgを消費している計算である。このコーヒー市場は、スイス市場においてさまざまな種類の製品、派生品、ブレンド製品を含んでいる。 2002年には、1246トンのマックスハベラー・ラベルのコーヒーが販売され、スイス市場の3%を占めるに過ぎない。(小売市場では5%) 3.3 コーヒーの苗の段階からコーヒーカップに至るまで コーヒーの木は、高温多湿の気候(平均気温18〜22度)の国で栽培される熱帯性の植物である。コーヒーは、標高600〜1500メートル(高原コーヒー)の熱帯地方に点在する70カ国で栽培されている。コーヒーの木は、常緑樹であり、その葉は、細長く濃い緑色である。場所によっては、年間通じて花をつける。花の段階からコーヒーの実をつけるまでのすべての成長過程は、同じ木の枝で行われる。 栽培と生産のさまざまな過程 ・苗の生産 高品質のコーヒー豆を選び、果肉をそぎ落として地中に植える。約10週間後、コーヒー豆が芽を出し、苗の高さが5〜10cmに達したところで、プラスチックでできた苗床に移す。 ・植え付け、花、コーヒー豆 4〜5ヵ月後、苗の高さが30〜40cmに達したところで、収穫を待つ耕作地に移し換える。コーヒーの木は3年目で花をつける。第1回目の収穫時期は、一般的に4年目である。5年目、6年目、7年目までがコーヒー豆の収穫に適した時期である。農民にとっては、最初の数年間は、貴重な投資期間となるわけだ。 ・摘み取り 摘み取りは手作業である。500gのコーヒーの粉のためには2.5kgのコーヒー豆を収穫しなければならない。豆の選別が必要であり、傷ついた豆や十分に熟成していない豆は、取り除かれる。 ・洗浄、繊維取り外し、発酵、乾燥 フェアトレード市場で扱われるコーヒーは、「湿温処理」方式を経ている。その過程は次のようである。
乾燥した豆は、小さな脱穀場にて脱穀され、手作業によって選別され、袋詰めされ、ヨーロッパの港に向けて船荷される前に計量される。(“緑コーヒー”と呼ばれ60〜70kg) ・焙煎 コーヒーは、貴重な天然素材の製品であるが、ある処理が必要となってくる。緑コーヒーは、一般的に消費者の国でブレンドされ焙煎される。高品質のコーヒーを作るためには、特に高品質の豆とさまざまな産地からの豆をブレンドさせることが必要である。一般的には、200〜250度で12〜15分間焙煎する。 ・パッケージと商品棚 コーヒーは、酸素に触れると急速に味と香りが失せてしまう。真空パックは最も理想的な保存方法である。商標登録と同様に製品化や商品化の条件について細かな規範が、フェアトレード・コーヒーのパッケージにマックス・ハベラー・ラベルと同様に記載されていなければならない。 ・コーヒーカップの中に 4. フェアトレード・コーヒー10年が経過、発展途上国へのインパクト マックス・ハベラー・ラベル発足以来10年が経過したが、その成績は、極めてよい。スイスでのラベルの認知度は、66%と高く、ラベル認定された製品の販売によるラベル収入は、継続的に上昇しており、市場、経済、市民社会は、この発展を熱心に応援している。国際的に見てフェアトレードの目覚しい進展が、明らかになり、各国推進団体との協力体制もまた整備されてきた。 発展途上国では、各自が当然の報酬を受け取ることができる貿易のシステムを構築することによって多くのプロジェクトが実現され、著しい改善がなされた。 フェアトレードの直接的なインパクトのいくつかの事例
発展途上国の恵まれない地域でのフェアトレードがもたらした明らかなインパクトは、数えきれない。最も素晴らしいインパクトとは、目に見えるものでなく、また、数値化できるものでもない。すべての農民や協同組合の責任者たちにとってフェアトレードとは、生き延びること、そして持続的発展を可能にすることと同義語である。主なインパクトとは、脱出することができないと思っていたトンネルに一筋の光を垣間見るように貿易システムに人間性を取り戻す可能性を生産者にもたらしたということであろう。 5.情報源と役に立つインターネットサイト
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