労働者の権利 - Workers' rights -

労働者の権利 - Workers' rights -

世界の農園や工場で働く労働者は、国際貿易において最も脆弱な立場に置かれています。フェアトレードはそのような労働者のために、様々な活動や支援を行っています。

Workers

南アフリカのフェアトレード認証ワイン用ぶどう農園で収穫作業をする労働者  ©JEANELDE MOUTON

農園労働者の多くは、土地を所有していなかったり、農業からは生計を立てられなかったりなど、持続可能な生活のための選択肢をほとんど持っていません。そのような労働者は、正式な雇用契約や結社の自由がなく、基本的な健康と安全や、適切な賃金の支払いが保証されないなどの課題を抱えていることが多くあります。たとえ善意のある雇用主だとしても、労働者たちに適切な賃金を支払い、より良い設備やより安全な労働環境に投資できるほどの十分な利益を得られていないという場合があります。

労働者の権利を確保することは、公正という観点だけでなく、ビジネスにとっても良いことです。賃金と待遇が公正であれば、労働者は職場にとどまり、組織の発展に貢献できるでしょう。また、個々の能力を向上させる機会提供があれば、マネージャーやリーダーへと成長していくことができます。そして家族を養い、地域社会にも貢献することができるのです。

フェアトレードの取り組み

労働者の権利はフェアトレード基準の中心であり、国際労働機関(ILO)の条約と勧告に基づいています。 フェアトレード雇用労働基準は、常勤の労働者を雇用するような大規模農園やプランテーションに対する要件を定めています。基準では、労働者の安全や健康に関する規則や、賃金、休暇、社会保障、契約などの雇用条件も定めています。

農園の労働者は、フェアトレードの取引でトレーダーが支払うフェアトレード・プレミアムの管理にも携わります。労働者の中からメンバーを選出し、フェアトレード・プレミアム委員会を設置します。子どものための奨学金や、少額貸付プログラム、家屋の修繕、賃金上乗せのための現金支給など、委員会がプレミアムの使途に関する年間計画を策定します。プレミアムを健康、教育、住宅のために活用することは、労働者とその家族の生活水準を向上させ、自由に使える収入の確保につながります。フェアトレードは、労働者がプレミアムをしっかりと管理し賢く使う能力を高めるための取り組みに力を入れており、他の要件と同様、プレミアムの使途を定期的に監査しています。これは従来のCSRプログラムとは異なり、プレミアムの使い道を企業ではなく、労働者自身が決めるというものです。

さらに労働者が自分たちの権利を知り、主張できるよう、基準を超えた取り組みを行っています。例えば、国際フェアトレード基準では、雇用主の義務として、従業員の労働組合への参加権利を認めることが定められていますが、フェアトレードでは、労働者のための研修を実施し、労働者の権利や経営陣との関わり方を教えています。

フェアトレードは、労働者の権利に関わるNGOや労働組合組織などの他組織と日頃より協働しています。活動の中には、女性の権利、職業上の健康と安全、賃金などのテーマに関連するものもあります。また、雇用主と労働組合が地域レベルで苦情や争議を解決する能力を向上させるなど、労働関係全般を強化することを目的とした活動もあります。良い事例として、バナナ産業の生産者組織と労働組合の労使関係を強化するために2017年からペルーで実施している対話フォーラムがあります。

小規模農園の労働者
小規模農園の労働者であっても「小規模生産者組織向け国際フェアトレード基準」によって、同様の権利が数多く保証されています。フェアトレードは2019年にこの基準を改定し、いくつかの追加的な保護を含めるとともに、10人程度の労働者を雇用する農場にも適用しました。季節労働者や移民労働者は一時的に雇われていることが多く、特に不安定な雇用状況に直面しているため、これらの労働者をより保護するための追加の解決策を模索し続けています。さらに、小規模農園で働く労働者は、正式な雇用契約を結んでいない場合が多く、労働者としての権利が適切に保護されないジレンマを抱えています。
こうした課題を踏まえ、フェアトレードは、農家と雇用労働者の間の取り決めの実態と、何らかの介入がもたらすであろう影響を把握するため、分析を行いました。フェアトレードの使命は、貿易によって疎外されている農家と労働者の両方に利益をもたらすことであるため、いかなる介入も、彼らの利益のバランスを取るよう取り組んでいます。

フェアトレードは、労働者の権利などに関わる団体と協力して、フェアトレード認証の農園やプランテーションで働く労働者だけでなく、すべての労働者の生活を向上させるために幅広い改革を行っています。フェアトレードの取り組みは、他団体を巻き込み、個々の企業単位を超えた変革をもたらすことを目的としています。フェアトレードはパートナー団体とともに、バナナ、花、茶の産業における労働者の権利を強化するための構造改革を提唱してきました。例えば2019年には、オランダの花卉産業における責任あるビジネス協定に、フェアトレードの最低賃金のコンセプトが取り入れられました。

フェアトレードでは、雇用主に対して正しいことをするよう要求するだけでは必ずしも十分ではないと認識しており、雇用主がそれを実行するための経済的余裕も必要だと捉えています。フェアトレード最低価格と長期契約の保証は、雇用主がフェアトレード基準で求められる労働者の権利を確保するために必要な安定性と資源を保持するのに役立っています。労働者が、サプライチェーンから得られた価値の公正な配分を受けられるよう、これらのフェアトレードの仕組みと労働者が持つ団体交渉権とを密接に関連付けていく必要もあります。

労働者の権利諮問委員会
フェアトレードは、労働者の権利諮問委員会を設置し、労働者の権利に関わる団体や労働組合団体にも委員会メンバーとして参加してもらい、戦略、基準、プログラムに関する助言を受けられることに感謝しています。この委員会は諮問機関であると同時に、生産者ネットワークを含むフェアトレード・インターナショナルの加盟団体と国際労働団体との対話の場でもあります。委員会に参加する団体は、フェアトレードの方針に影響を与えるために適切と考える政策提言のアプローチを自由に選択することができます。

フェアトレードは、すべての労働者が安全で尊厳のある生活と労働ができるように、自分の賃金と労働条件を自ら交渉する力を得られる世界を思い描いています。フェアトレードを選ぶことは、労働者自身がより力を得られる基準やアクションを支持するということを意味します。

元記事、関連する資料のダウンロードはこちら(英語):https://www.fairtrade.net/issue/workers-rights

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